琉球絣2
琉球絣イメージ画像
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自作のデニム地を見せてくれた大城拓也さん
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 その後、廣四郎さんが工房中を案内してくれた。今日は調子がいいから、と、染色室、絣括りの部屋、二階の蒐集(しゅうしゅう)室へも同行し、展示されている作品資料の解説まで丁寧にしてくれた。資料室とも呼べるその部屋には、年代物の絣や奥様のために織った着物などが展示されていた。再び一階へ下り、廣四郎さんの後に続く。自宅の中庭へ案内してくれる。
糸をここでのばすんだよ、と側にある棒に手をかける。庭にある木々の中にも染料になるものがあって、「これからは黄緑がでるよ、これは黄色」などと説明してくれる。
 廣四郎さんはゆっくりとした動作で庭の中を移動する。ずっと遠くの方を見つめている。風が出てきた。退去する旨を告げ、中庭を後にする。振り返ると廣四郎さんはまだ庭にいて、ふくぎの葉をなでているのが見えた。


私が工房を訪ねたとき、拓也さんは、某有名デザイナーから発注を受けたというデニム地に使う糸を染めているところだった。木綿の太い糸だからね、ほこりがすごいよ、廣四郎さんがいう。何度も何度も手で払う仕草をしては笑っていた。木綿はどうしてもね、一夫さんも口をそろえる。
二人ともそうはいうものの、顔は誇らしげだ。
あたらしいことに挑戦している姿を、祖父として、父として、というよりも同じ仕事に携(たずさ)わるものとして嬉しそうだ。「伝統的なものもね、いいものをつくりますよ」と続けた。
案内された染色室で作業中の拓也さんにお会いする。染め上がったばかりの木綿糸を見せてくれる。ごみがとぶよ。また廣四郎さんは大げさにまゆをしかめる。
 拓也さんの新作を見せてもらえることになった。納品前のデニムの布。黄色い絣が藍の中に並んでいる。絣が藍地に映えて美しい。もう一つは大きな柄が織り込まれたデニム地に廣四郎工場のコというマークが入っている。どんな服になるのか楽しみだ。
こういった仕事を受けることについて尋ねると、
「新しいことも大事だけど、やっぱり伝統の部分は大切。それが根っこになきゃだめですね」
と話す。自ら反物を持って撮影に応じてくれる。これからの琉球絣が楽しみだ。
 廣四郎さんも自分が織った反物が服地に使われることに抵抗はないのだという。「ポーラ賞受賞の時に琉球絣のジャケットを着ていったらみんなびっくりしとったよ」
と写真をみせてくれた。すてきな光沢の、深い藍のジャケットを着た、満面の笑みの廣四郎さんがいる。そのアルバムを次々とめくり、説明をしてくれる。ふと廣四郎さんの手がとまった。女装をした男性の写真がある。誰なんですか。と笑うと、おどけたようすで自分だと指をさす。まったく廣四郎さんには驚かされてばかりであった。

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