歴史的な背景

 舞踊を中心に沖縄芸能を歴史と拡がりのなかでとらえるとき、琉球舞踊が沖縄文化の結晶のように思えてしかたがない。歌・三線には文学と音楽が、衣裳には染織技術が、からじや小道具には伝統の技術が集約され、もちろん舞踊の様々な所作にも歴史や地理的拡がりが感じられる。

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 「祭り」の神聖な場から始まった「手のふり」が舞いとなり、踊りをともなって舞踊となった。村々の行事や祭りの場での庶民の舞踊が、国が形を整えはじめると王や貴族たちの前で披露され舞台芸能となった。外国からの使者をもてなすため、他国の芸能の要素を取り入れながら沖縄らしい純度の高い舞踊へと磨き上げられていく。王国の崩壊にともない、舞踊は再び庶民のものとなる。ただし、より洗練され身近な生活がテーマになると庶民は心をうばわれた。
 戦争で物質的なものは失ったが、歌や踊りが生きる支えとなった。経済的に豊かになった今日、精神活動の充実あるいはアイデンティティを確かめるものとして琉球舞踊をふくめた芸能は存在している。そして、今日の舞踊公演や地域の村踊りや伝統行事の中に舞踊の系統発生的な流れを一望できるのも、沖縄芸能の凄さである。


冊封使以前の芸能 冊封使の時代 明治以降の芝居小屋の時代 戦後女性舞踊家の時代
冊封使以前の芸能 冊封使の時代 明治以降の芝居小屋の時代 戦後女性舞踊家の時代

写真:砂川敏彦/沖縄県立博物館