そんなある日。

島に大勢の役人がやって来て、村中の人みんなに集まるよう命令して、こう言った。
「王様の命令として、これまでおさめていた米やさとうをもっと多く納めるように。 それには今の土地では足りないので、新しく米やキビを作ることのできる土地を開くことになった。
ついては、この島から石垣島へ人を移すことになった。 村の中道からこちらへ住んでいる者は、全員明日の朝、石垣島へ行くことを申しつける」

いっしゅんシーンとなった村人だけど、そのうちに、
「大変なことだ。ぜったいに行かんぞ」
と、さけぶ声が多くなった。

「えーい、だまれ、だまらんか。もんくをいうやつは、ここで今すぐ切ってやるぞ」
刀を持ってみんなの前に立ちはだかる役人に、だれも声を出す者はいない。

そこへ出てきたのがカニムイ。

「お願いです。こちらには、私とけっこんすると約束したマーペーがいます。そのむすめだけは連れて行かないで下さい。お願いです」

でも、役人は刀を持ったまま言うことを聞いてはくれない。

しかたなくあきらめマーペーとカニムイは、たがいに見つめあったまま、だまって別れるしかなかったって。

中道をへだてていただけで、はなればなれになったマーペーとカニムイだったわけ。