垣花集落の南側、石畳の道を降りた所に湧き出ている水量の豊かな井泉。土地の人は「シチャンカー」ともいう。 崖下から湧く水を石の樋で石槽に落とす構造で、右側にイキガガ−(男川)、左側の小高い所にイナグガ−(女川)がある。下流の浅い水たまりは、馬浴(ウマアミシー)川とよばれ、馬に水をのませたり、馬の体を洗ったりしていた。樋川から流れた水は下流の田畑をうるおし、かつては稲作に、現在はクレソンなどの野菜栽培に欠かせない水となっている。 森が開けた場所にある井泉は眺めもよく、眼下に広がる太平洋や、そこに浮かぶ久高島・コマカ島・アドキ島も遠望できる。
30〜40メートル上にある高台の集落まで、この樋川から水を汲ぶ仕事は重労働で、かつて、垣花部落に嫁にいくことは嫌がられたという。石畳の途中にある、「ナカユクイ(一休み)石」とよばれる、畳一丈ほどの大きな平たい石では、その昔、水を運んできた村の女性たちが、呼吸を整えながら休息をとったのだろう。 樋川に接する垣花川原貝塚では、約3000年前から人々が住み、この井泉を利用していたことがうかがえるという。現在でもこの水は村の簡易水道として利用されているほか、景観のすばらしさから、環境庁の全国銘水百選にも選ばれている。 15.仲村渠樋川(なかんだかりヒ−ジャ−) |