名護市許田の北側ふもとにある井泉。平屋敷朝敏(へしきやちょうびん)の、恋物語を題材にした組踊り「手水の縁」で広く知られているが、元来は許田の人々の大切な生活用水であった。泉にみられる恋物語は各地に多く残っており、「手水の縁」の背景にも、この許田の地がかつては旅人の通り道であったことから、旅人と村の乙女と思われる美女とのロマンス譚が広まったのではないかとされている。 琉歌に「昔手にくだける情けから出ぢて なま(今)に流れゆる許田の手水」とうたわれているように、丘陵の渓流水を用いた井戸である。現在はだいぶ改修がほどこされ、屋根や貯水槽等も設置されており、沖縄の一般的な井戸のイメ−ジとは趣を変えている。 許田に橋がかかる前は、大きく入りくんだ内海(入り江)に沿って道が走っていたため、道行く多くの旅人はこの泉に立ち寄って、ノドをうるおしたといわれる。 1973(昭和48)年11月、名護市文化財(史跡) 09.具志堅大川(ぐしけんウプガ−) |