小さな島々からなる沖縄では、水の確保は常に一番の課題であった。苛酷な生活環境を表す「離島苦(シマチャビ)」という言葉も、多くは慢性的な水不足に由来するといえる。 水の豊かな本土では、稲作の収穫をあげるための「土」や「土地」が重要であり、沖縄の「水こそ命」という環境とは大きく異なっている。それは、互いの風土観に大きな影響を与えているといえる。 沖縄で泉や井戸をことさら大切にするのは、苛酷な自然環境がもたらした必然の成り行きである。コンコンと湧き出す井泉には、霊力(神の力)が及ぶともされた。それは生命の源であり、神(常世)と人間(この世)を結ぶ通路でもあるとされた。 すでに枯れて使用されていなくても、今日でも井泉が土地や水の神として信仰されているのは、そういう環境がもたらした固有の社会や文化のあり方に、大きく影響されているのである。
水の恩恵を仰ぐ沖縄の人々にとって、湧き水の存在は、そのまま神の恩恵に浴することであった。人々が飲料水となる水の地に集まり、集落を形成するのは必然であり、井泉(せいせん=井戸)を造って水の神を祀るのは一般的となった。人々は今でも、日常的な習慣として井泉の神を拝んでいる。 02.水の信仰1 |