古典女踊り
思い入れと省略の美「諸屯」(三角目付)

 古典女踊り「諸屯」(シュドゥン)はギリギリにそぎ落された所作で、ありったけの「思い」を表現する。小道具を持たない手踊りは、房指輪(フサイービナギー)が手の表情を唯一きわだたせるのみ。一曲目の「仲間節」では前進し回って帰る動きばかり。舞台が道路のように一直線に伸びていたら、そのまま歩き続けるだろう。二曲目「諸屯節」の「枕並べたる」で「三角目付」(サンカクミィジィチ)と呼ばれる特殊な目線の技術がある。逆三角形に視線を中空に移動させ、追憶の夢のつれなさ、せつなさが心情表現される。うっかりすると見落としてしまいそうな目の動きだが、古典女踊りの魅力を象徴する表現技法である。また、「枕手」、「抱き手」などの特殊技法も見のがせない。

紅型 紅型
三角目付
(サンカクミィジィチ)
枕手
(マクラディ)
三角目付 抱き手
三角目付
(サンカクミィジィチ)
抱き手
(ダチディ)
三角目付  
三角目付
(サンカクミィジィチ)
 

花笠のあつかいの妙「伊野波節」

 「伊野波節」(ヌファブシ)の歌持ち(前奏)とともに花笠を手にした女が舞台中央まで角切り歩み出る。待ち合わせの場所に来ない男に女性の影を感じ、恨めしく情けなく思いながらも、諦めきれずに男のもとに通いつづける女心を花笠の動きにたくし表現する。「よそに思なちやめ」(よその娘に心を引かれたのでしょうか)で「よそにの手」と「ちゃーみの手」があり、花笠に込められた女の思いの深さがピークに達する。
 2曲目の「恩納節」では花笠をかぶり、明け方近くまでひとり待ち疲れた娘が、来ない男にぐちをこぼすかのように両袖を取る所作「袖取り」がある。3曲目の「長恩納節」になると「白雲手」や「月見手」「あごあて」の手の動きに、会えずに帰る空しさと白雲にかくれた山(恩納岳)に会えない男をだぶらせ、せつない思いが表現される。

よそにの手 ちゃーみの手
よそにの手
(ヨソニノテ)
ちゃーみの手
(チャーミノテ)
袖取り 白雲手
袖取り
(ソデトリ)
白雲手
(シラクムディー)
月見手 あごあて
月見手
(チチミディー)
あごあて
(アゴアテ)

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写真:砂川敏彦