ポストモダンから多様化主義へ


1990年代 アジアへ

 

 

 1990年代は沖縄の文化全般において、世界へ広く発信し、自立を目指す動きが見られる。かつての大交易時代を想起した、県外、海外との積極的な様々な交流が見られる。沖縄がこれまで「南島」として語られる側であり続けたのが、語る側へと転換する可能性を探る時期ともいえよう。
 美術においては、琉球弧を意識した奄美との交流、済洲島あるいは台湾などとの交流もたびたび行なわれるようになる。
 モダニズムの衣に包まれながらそれを対自化しえず、脱ぎさることもできなかった世代に代わって、やすやすとそれを脱ぎ去り、あるいは素裸のまま「自然」に表現する若い世代が現われた。沖縄の風土にこだわる世代が、けっきょく大正期以来作られた南島イメージに押つぶされたり、抗ったりするなかで、彼等はモダニズム言語をすでに内面化しながら自己の領域をエネルギッシュに押広げていくのである。また、つくられた風土を超えて新たな固有性を探る試みをする若手も現われた。彼等の心性はアジア的とでもいうような開かれたものである。
 とはいえ、「自然」に、インスタレーション等に取り組むことは、単なるこれまでの反覆であり、今後の展開に注目したい。

 

 

 


参考図書
西森美術村追想/大城精豊・『新生美術10号』・1992.6 戦後沖縄美術の前衛たち/星雅彦・『沖縄戦後美術の流れ展図録』・沖縄県発行・1995.8 沖縄絵画小史/大城白人・『受容と放射−南からの光線 山城見信 島武巳展カタログ』・ギャラリー日鉱(東京)発行・1993 焦土のなかから甦った画家達/大城精徳『写真集沖縄戦後史』那覇出版・1986 終戦直後の沖縄美術小史/川平朝申・『新生美術3号』・1984.8







 
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