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動物は生きていくために進化します。そして鳥は飛べるようになりました。ではなぜ、鳥は空を飛べるのでしょうか。鳥は巣をつくります。卵を育てるために巣をつくります。ではなぜ、卵を生むのでしょうか。チドリの親はその巣を守るためにけがをしたふりして敵の目を巣から遠ざけます。ヨシゴイは身を守るために草むらの中に忍者(にんじゃ)のように上手に隠れます。みんなそれぞれ生きていくためにいろんな知恵とワザ、習慣を身につけたのです。
ここではそんな鳥たちに関する小さな疑問やおもしろい習慣を紹介します。
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| 鳥はどんな動物? |
鳥とは、飛翔生活(ひしょうせいかつ)が最も発達した脊椎動物(せきついどうぶつ)で、体は羽でつつまれ、骨は、中が中空(ちゅうくう)になり、軽くてじょうぶな構造でできています。また、空を飛ぶための胸の筋肉が発達し、視覚(しかく)と聴覚(ちょうかく)が特に発達しています。鳥は、空を飛ぶために進化した動物といえます。しかし、ヤンバルクイナのように飛ばない鳥もいます。これは、天敵(てんてき)が少なく陸上での生活が安全であり、飛ぶ必要がないため羽が退化(たいか)したと考えられています。 |
飛翔するサシバ▲ |
| なぜ、鳥は卵を生むの? |
鳥は、動物の中でも高等動物になります。高等動物の繁殖方法(はんしょくほうほう)には、卵生(らんせい)、卵胎性(らんたいせい)、胎性(たいせい)の3つがあります。胎性や卵胎性の方が環境の変化や補食(ほしょく)の危険が少ないため安全なのですが、鳥は空を飛ぶため、できるだけ軽い方が望ましいのです。このため鳥は巣づくりし、卵を産み育てる方法を採用しました。これはさまざまな進化の過程で、鳥類が身につけた繁殖方法(はんしょくほうほう)であり、より適した方法で進化したものだと考えられます。 |
野鳥のたまご(セッカ)▲ |
| 鳥の眼はどのくらいすごいの? |
鳥にとって視覚(しかく)はとても大切な機能になります。なぜなら、空を飛びながら遠くの獲物を見つけだし、そして近づき、瞬間的(しゅんかんてき)にそれを捕らえるためです。鳥の眼は顔の面積に対して、大きな割り合いをしめています。そのため、視界の広さや視力は大変すぐれています。たとえば、タカ類では、ヒトの6倍以上の視力を持ちます。また、鳥の種類によって視界の広さなどはさまざまですが、それぞれに特徴のあるすばらしい眼を持っているのです。また、ヤマシギやフクロウの仲間のように夜行性(やこうせい)の鳥もおり、「夜目」がききます。 |
エサをまちぶせするカンムリワシ▲ |
| 夏と冬とで羽の模様が違うの? |
ほとんどの鳥は、年に一回、おもに繁殖期の後に羽毛がぬけかわります。このことを換羽(かんう)といいます。これは、古くなった羽毛を新しくすることで、羽毛の断熱性と防水性を保つために必要な行動なのです。そして、羽毛がぬけかわることで、体の色がかわります。春から初夏の頃の羽を“夏羽[繁殖羽(はんしょくう)]”といい、秋から冬の頃の羽を“冬羽”といいます。ハマシギやムナグロなどは、冬羽は灰色っぽいですが、夏羽は背中が全体に赤かっ色っぽく腹部(ふくぶ)も黒くなります。 |
ムナグロの夏羽、冬羽▲ |
| 鳥はどのようにしてねむるの? |
野鳥の種類によってねむる場所にそれぞれ違いがあります。カモ類などの水鳥(みずどり)は、水面に浮かんだまま頭部を翼におさめてねむり、ツルの仲間は、水辺で首と片足をかくして、立ったままねむり、ヒヨドリやシジュウカラは、単独(たんどく)で木の上などでねむります。木の上でねむる鳥が落ちないのは、鳥は脚を折り曲げてねむるからで、脚を曲げることで腱(けん)が引っぱられ、指が枝をしっかりとにぎれるからです。また、羽毛をふくらませることで保温効果(ほおんこうか)があるからです。 |
眠っているメジロ▲ |
| “羽づくろい”するのはなぜ? |
鳥は、クチバシを使って羽をひんぱんに手入れをします。これは、よごれや寄生虫を取りのぞくことと、換羽(かんう)を促進(そくしん)することに効果があります。また、カモの仲間は、尾羽のつけ根にある尾脂腺(びしせん)から分泌(ぶんぴつ)される脂(あぶら)をクチバシにとり、羽毛にぬりつけています。このほかに、水浴び(みずあび)や砂浴び(すなあび)、日光浴なども羽の手入れの一つになります。 |
上.スズメの砂遊び 下.ヒバリシギの水浴び▲ |
| なぜ、別の種類で群れをつくるの? |
秋冬になると、いろいろな種類の鳥が同じ場所に集まって集団で移動しながら、エサをとることがあります。このことを混群(こんぐん)といい、シジュウカラの仲間などによくみられます。混群をつくる理由は、大勢で鳴くことにより虫たちが動きだし、見つけやすくなるということと、敵をいち早くみつけて身を守るためだと考えられています。しかし、繁殖期にはむれを離れ、番(つがい)を形成して、なわばりをつくります。これは、ヒナの時期は拡散(かくさん)した方が危険が少ないためです。 |
群れで生活するメジロ▲ |
| 森のドラマー/ノグチゲラ |
キツツキの仲間は、小鳥のさえずりにあたる鳴き方はしません。そのかわりに、木のみきをすばやくたたいて音をだす“ドラミング”という方法で、なわばりをほかの仲間に知らせます。また、キツツキは木のみきの下から上へとらせん状に移動し、木をつついて、中にいる昆虫類などをさがして捕食(ほしょく)します。その他、キツツキの巣あなは、ほかの鳥たちの巣あなになったり、枯れ木の腐朽(ふきゅう)を早めたりするという重要な意味もあります。 |
ノグチゲラの採餌痕▲ |
| 夜のハンター/コノハズク |
フクロウの仲間の眼は、ヒトと同じような位置にあるため、両目で広い範囲をみわたせ、暗いところでもよく見えます。顔を上下左右に回転させて広い視界を確保できるわけです。また、顔全体が耳のようなはたらきをし、どんな小さい音でも拾い集める集音器(しゅうおんき)の役割をしています。夜行動することが多く、羽音もなく飛び回り、ネズミや昆虫などを捕まえる猛禽類(もうきんるい)に属する夜のハンターです。 |
コノハズク▲ |
| ミルクで子育て/ハト |
鳥にはミルクをだすための乳腺(にゅうせん)がありません。しかし、ハトは素嚢(そのう)からでるミルク状の液体をあたえてヒナを育てます。この液体は、“ピジョンミルク”と呼ばれ、脂肪やタンパク質を豊富に含み、ヒナの成長にはかかせないものとなっています。また、フラミンゴが同じように“フラミンゴミルク”と呼ばれる液体で子育てすることが知られています。 |
キジバト▲ |
| ふしぎな習慣“はやにえ”/モズ |
モズの仲間は、秋の頃に捕らえた獲物を木の枝や有刺鉄線(ゆうしてっせん)にさしたり、小枝にはさんだりする“はやにえ”という習性をもっています。はやにえをする理由については、生まれながらの本能であるという説やエサを固定して食べるという説、秋によくみられる習慣からエサの不足を考えた貯蔵説などがありますが、はっきりしたことはまだわかっていません。 |
シマアカモズ▲ |
| ホバリングとダイビング/カワセミ |
カワセミの仲間は、魚を採食(さいしょく)するのに適した鳥です。立派な長くて大きいクチバシをもち、小枝や岩の上、空中でホバリングしながら水面を観察し、魚を見つけると水中にダイビングしてとらえます。つかまえた魚を岩などにたたきつけ弱らせて、頭の方からのみこんで食べます。また、繁殖の時期には、オスがとった魚をメスにプレゼントしてプロポーズします。 |
獲物をねらうカワセミ▲ |
| 水に浮かぶ巣/カイツブリ |
カイツブリの仲間の巣は、水の上にあり、水草をかさねた“浮き巣(うきす)”をつくります。浮き巣は、水面の変化に合わせて上下するというすぐれものです。また、カイツブリの親は、巣をはなれるときに水草をかけてタマゴをかくします。オスもメスもタマゴやヒナの世話をよくし、エサをくちうつしであたえたり、ときには、親鳥がヒナをおぶったりもします。 |
カイツブリと浮き巣▲ |
| パパが子育て/タマシギ・ミフウズラ |
タマシギは、“一妻多夫(いっさいたふ)”という配偶形態(はいぐうけいたい)をとります。これは鳥の中でもひじょうにまれで、全鳥類9000種のうち1%ほどの種類しかいません。また、これらの種は、メスのほうが大きく、派手で美しく、交尾前のディスプレーもメスがおこないます。メスがタマゴを生んだあと、抱卵(ほうらん)と子育てをオスがします。タマシギのほか、ミフウズラなども一妻多夫の鳥です。 |
子育てするタマシギ▲ |
| 子どもを守る/シロチドリ |
チドリの仲間は、地面の浅いくぼみに巣をつくるため敵に見つかりやすくなってしまいます。そのため、敵が巣に近づいたとき、親鳥は羽をバタバタさせて、けがをしたふりをして敵の目を自分に引きつけ、巣から敵を遠ざけてタマゴやヒナを守ります。このことを擬傷(ぎしょう)行動といいます。これは、体をはって子どもを守るという、小さな動物の大きな知恵(ちえ)なのです。 |
擬傷するコチドリ▲ |
| ちゃっかりもの/カッコウ |
カッコウは自分で子育てをしないで、ほかの鳥の巣にたまごを生み、育てさせます。このことを托卵(たくらん)習性といいます。カッコウの托卵は巧妙(こうみょう)で、たまごの模様を托卵する鳥のたまごに似せて生みます。ただ、失敗することも多く、ほかの鳥たちから攻撃を受けたり、たまごをすてられたりします。日本にはほかに、ツツドリやホホトギスなども托卵しますが、いずれもカッコウ科の鳥です。 |
托卵する鳥ホトトギス▲ |
| 精一杯のかくれんぼ/リュウキュウヨシゴイ |
敵から身を守るために鳥たちはいろいろな護身術(ごしんじゅつ)を身につけています。その方法の一つに“擬態(ぎたい)”と呼ばれるものがあります。そのために、鳥は周辺の草木に保護色(ほごしょく)として模様や色を似せています。水田・湿地で見られる野鳥のヨシゴイの仲間は、周辺の草木と保護色で、クチバシを上に向けて体をまっすぐにのばしてその姿をかくそうとします。 |
擬態するリュウキュウヨシゴイ▲ |
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