解説
なーみなーみわんわちゃくり(沖縄本島・那覇)

 わらべうたの中には、天体気象や自然を歌ったものも沢山みられます。
 ここに挙げた、「波波わんわちゃくり」は、海辺で子供たちが波とたわむれる様子をうたにしています。波に関するわらべうたは、他に、「潮ぬ満っちゃんてーまん、あてぃんねーらん」(潮が満潮になっても、あてもない)という短いわらべうたもありますが、あまりー般には知られていないようです。

 
波

 さて、波よ自分をくすぐってくれというところは子供らしい天衣無縫の発想ですが、このうたの作者はきっと、明るく快活な、日焼けした子供たちでしょう。子供は、世界じゅうどこの子供でも明るく元気であることが望ましいのですが、都市化された現代では、車社会の恐怖から、親が子供をアパートなどの部屋にとじ込めがちで、テレビっ子やカギっ子がふえ、自然と親しむ機会の少ない、気弱でモヤシのような子供を作りあげているのは、ほんとうに悲しむべき現実です。
 このわらべうたに登場する子供は、大自然の波に向かって、「さあ、ぼくをくすぐってみろ」と波をおびきよせては、サッと身をかわして逃げて行く、わんぱくな子供たちです。波が遊び相手とは、いかにも海にかこまれた沖縄らしいわらべうたです。
 「ユーチヌ崎」は、「雪の崎」と書く人もいますが、はっきりした意味は不明です。むかし、那覇市若狭町の上の毛(地名)にあった岩鼻を指しているともいわれます。
 いずれにせよ、かつてあの女流歌人・恩納ナビが、「風の声(くぃん)も止(とぅ)まれ、波の声(くぃん)も止(とぅ)まれ」と詠んだような自然をのり越えようとする雄大な発想にも似て、沖縄の子供たちの心の中に強く生きているたくましさと、本来の子供らしい、健康的な明るさが美しく感じられます。

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