解説
じんじん(沖縄本島・那覇)

ほうほう 螢来い
あっちの水は苦いぞ
こっちの水は甘いぞ
ほうほう螢来い
(関東地方)

 長い梅雨があけると、あちこちで螢の飛び交うのが、よく見られるようになります。螢を歌ったうたは、日本各地にあるようですが、中でもこのうたは関東に限らず、ほとんど日本全国くまなく伝播しています。

 
川

 沖縄に近い九州では、

ほ、ほ、ほおたる来(け)
たんぼん水か好(し)いとるか、
井がはん水か好いとるか、
好いとる水ば汲んでくりゅ
(福岡)

ほたる さがりんこ
おしの水ぁべべ水
おるが水ぁてぇてぇ水
ちょいと来い びや飲まそ
(長崎)

 「おし」はお前、「おる」は俺、「ベベ水」は汚い水、「てぇてぇ水」は綺麗な水、「びや」は水、いずれも対馬の方言―薮田義雄訳。
 などと面白いものがあり、いかにも螢のあとを追っていく子供たちの姿が目に浮かぶものです。

 螢は、昼間は草の葉の露を吸いながらひそんでいますが、夜になると、お尻に小さな提灯をつけて夜空を自由に飛び交います。その姿に、子供たちはあどけない憧れを持っているものです。日本情緒の中によくとけ込んでいるこの小さな動物は、子供たちの世界にもよく登場し、昔から親しまれています。
 夏の暑い夜に、浴衣姿でウチワを持って、螢狩りに出かける夢は、日本人なら誰もが描く夏の風物詩といったところでしょう。わらべうたの中では、この螢のファンタジックで、不思議な魅力がそのままメルヘンの世界へとひきつけています。

【比較】
じーんじーんたくけ(沖縄本島・首里)
じーんじーんたくけ
酒屋(さかや)ぬ水喰(みじくゎ)てい
粉食(くーくゎ)てい
落(う)てぃりよー じんじん
下がりよー じんじん
(3学年)

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