解説
あぬふしてぃーち(沖縄本島・那覇)

 昔から日本各地で「一番星 みーつけた」と子供たちが歌っているわらべうたがあります。これは、その沖縄版ともいえるものでしょう。月や星を題材にしたわらべうたは、本土各地よりも多いような気がするのも、小さな島々の特徴なのかもしれません。
 本土でも、月や星と対話するわらべうたがいくつかあり「お月さんいくつ 十三七つ」など広く歌われていますが、沖縄では次のようなうたがあります。

 
夕暮れ

月(つき)ぬ美(かい)しゃ・十日三日(とぅかみーか)
みやらぴ美(かい)しゃ 十七(とぅなな)つ
ホーイーチョーガー
東(あ)りから上(あ)りおる
   大月(うふつき)ぬ夜(ゆ)
沖縄(うきな)ん八重山(やいま)ん
   照(てぃ)らしょーり
(八重山・石垣)

とーとーめーさい とーとーめー
うんじょーまーかい めんせーがー
西(にし)ぬ海(うみ)かい ガニ小取(ぐゎとぅ)いがる
めんせーるい
あんさーわんにん てぃーちぇー
くみそーれ
(沖縄本島・首里)

あっとーめーたり あっとーめー
うふむち やとぅむち
うたびみそーり あっとーめー
やーんぬくぬや
馬小(んまぐゎー)やらわん 牛小(うしぐゎー)やらわん
ぁぎやびら タリタリタリ
(沖縄本島・首里)

天(てぃん)ぬ群(ぶ)り星(ぶし)や 読(ゆ)みば読(ゆ)まりしが
親(うや)ぬゆし言(ぐとぅ)や 読(ゆ)みやならん
夜走(ゆるは)らす船(ふに)や ニヌファ星(ぶし)みあてぃ
我(わ)ん生(な)ちぇる親(うや)や 我(わ)んどぅみあてぃ
(「てぃんさぐぬ花」・沖縄全般)

 お月さんやお星さまは、沖縄でも昔から子供たちに親しまれてきたことがよくわかります。
 さて、「あぬ星一(てぃー)ち」とは「一番星みーつけた」と解釈することも出来ますが、直訳を重んずれば「あの星一つ」、「我(わ)ん一(てぃー)ち」は「私のもの一つ」で、「あの星一つに 私のもの一つ」「あの星二つに 私のもの二つ」と、星を指さしては、自分が見つけた星を一つ、二つ、三つと数えているようにも考えられます。
 いずれにせよ、このわらべうたは「はやくちことば」のように、一息で「てぃーち」から「とぅー」まで早く言った人が勝ちになる遊びです。
 沖縄の夏の夜空を降るように輝く星の数を見て、その驚くばかりの美しさに、私たちは心を奪われるばかりです。子供たちは夕暮れどきから、一つ一つの星を見つけては、大きな声でこのうたを歌いながら遊んだことでしょう。現代の子供たちは、星空を見ているでしょうか。たまにはテレビを消して、月や星と対話する時間を持たせてやりたいものです。
 遊び方は「あぬ星一(てぃー)ち」で、天に向かって人差し指をさします。次に「我(わ)ん」で、自分の鼻のあたりをさして「一(てぃー)ち」でもう一度天をさします。続けて「あぬ星」で、自分の顔のあたりに指を戻し、人差し指と中指の2本を出して「二(たー)ち」と天に向かってさし出し、また「我(わ)ん」で自分の顔のあたりをさし「二(たー)ち」で天に向かって2本の指をさします。以下同じようなしぐさで、指を3、4、5本、6本からは両手を使い7、8、9、10本と続け「我(わ)ん十(とぅー)」で終わります。

【指導のポイント】
 この遊びは「ことばあそび」と「指あそび」の二つが複合された遊びです。両方の効果をあげるためにもまず最初にゆっくりと、一節ずつ言葉もはっきりと言えるように練習してから、だんだんに早く言えるようにして遊んで下さい。手の動きは出来るだけ大きく、大空に向けて呼びかけるようにします。

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