水島 源晃(みずしま げんこう) 作品 略歴 メッセージ 戻る

記録として残せ


撮影:津野力男

 1998(平成10)年に亡くなった水島源晃は、1986年(昭和61年)6月6・13・19日付の朝日新聞紙面「沖縄を語る」で、写真についてインタビューにこたえている。以下はその抜粋である。

 「サンゴ礁の海や亜熱帯の花、独特の歴史を伝える文化財といった県外の旅行客が撮りたいものには、われわれも魅力を感じますし、誇りにも思います。しかし、ただの記念写真以上の何かを撮りたいのなら、いまの沖縄を記録するんだ、という気持ちでシャッターを切ることですね。まず手がけてほしいのは、現在の沖縄の記録です。昭和61年ごろ、この地域はこんな生活だったんだ、とのちの時代に伝える写真ですね。いま撮っておかなきゃいけないもの、記録として残しておきたいところが、ずいぶんありますよ。毎日、変わっていますから、沖縄は。失われる前に写真に撮っておくのが一番です。そういう記録を一枚でも多く残したい。それには、アマチュアが、つまり、身近な人が撮ってくれるのが一番いいんです。」

 「ファインダーをのぞいて、見えるもの全部を撮ろうと考えないことです。人間の目はほぼ180度見えますが、意識して見ているのは一点です。それに対して、カメラは普通、視界にはいったものをすべて写してしまいます。ですから、美しいと思ってカメラを向けても、そのままシャッターを切ったのでは、何を撮ったのかわからなくなります。そこで、構図が重要になってきます。何を生かすかを決めるわけです。人物の表情がよければ顔を、動きがおもしろければ手を、という具合に、いいと思ったら、どんどん近づいていって撮ることです。」

 「いいと思って処理しても、自分が考えたような写真ができていないこともあります。そんなときは、もう一回行くんです。何回か通ううちに“これだ”というのが出てきます。しつこさも必要ではありますね。人物や作業を撮る場合に大事なことは、撮った写真の何枚かを相手に贈ることです。二度、三度、と通う相手には“この前の写真ですが”と必ず持っていく。これは素人にも必要なことです。そうすることによって、アマチュアの活動の範囲が広がってくるんです。その人ひとりの問題じゃないんですよ。写真は人間関係、人と人とのふれ合いですから、頼んで撮らせてもらった人とのつながりを保っておかないといけません。」

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