沖縄の民俗文化は、大きく言えば信仰にもとづいて形づくられている。
 例えば、沖縄には御嶽という神聖な空間がある。御嶽は本土のように神社などの建造物がなく樹木がこんもり茂った場所にある。香炉や石が御嶽を確認する目印になる。御嶽での祭りは“神女”が中心なのも特徴的である。
 信仰の際には女性が大きな役割をもつ。ウナイ神という言葉があり、男性にとっての姉妹を意味している。ウナイ神信仰は、兄弟に対して霊的に守護するということの表れである。
 祭りや行事でも女性の役割が重要とされている。ノロ(祝女)は琉球王国時代に制度化されたものであったし、王国が崩壊してからも村の祭りを担っている。また、ユタ(呪術職能者)も圧倒的に女性が多い。ユタは公的な祭りに関わるというより、個人的な吉兆を判断したりする。このように、沖縄の信仰には大きく女性の霊力が中心をなしている。
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 沖縄には、信仰や祭りに関する言葉が多い。魔除けのシーサ−や石巌当、家庭を守る火の神ヒヌカン、豊年祭などで行われるハーリ−や綱引きなどである。一年のなかでの祭りや行事には農業や漁業に関するもの、祖先祭祀に関するもの、また季節の節目に関するものなど多彩 である。
 沖縄本島及び周辺離島では、旧暦の2月、3月、5月、6月にウマチー(お祭)の豊年祭の行事がある。また、沖縄では海の彼方にニライカナイという幸福や豊穣をもたらす楽土があることが信じられており、沖縄本島北部などでは、ウンジャミ(海神祭)を旧暦の7月に行っている。
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 沖縄の墓は本土に比べて形と大きさでかなりの違いがある。形は破風型や亀甲型があり、中国の影響を受けている。大きな墓が多いのは、門中(親族集団)が発達していることが主な原因である。門中は門中墓を共同で所有し、シーミー(清明祭)やジュールクニチ(一月十六日、後世の正月)、七夕などで成員によって拝む習わしになっている。
 古き沖縄の民家である赤瓦屋根、それを取り巻くサンゴ石灰岩の石垣やフクギの防風林も、まだ民俗的な趣で各地に残っている。亜熱帯の動植物や岩石・貝殻を使った民具、中国や東南アジアに分布する紀元前の文献にしか見られない学術的に貴重なものも含む民話なども、沖縄の民俗を知る大きな手がかりである。

◆写真提供: 社会福祉法人 沖縄コロニー