森の川

 この物語の舞台になっている宜野湾市真志喜にある「森川(方言ではムイヌカーといいます)」に行ったことがありますか。うっそうと茂る緑の中、きれいに切られた石積みのきれいな場所で、清水が流れ出ています。まるで今でも、きれいな天女が水浴びをしているような錯覚におそわれそうです。ただ、見たとしても、羽衣を隠そうとは思いませんが・・・。
 物語の最後の方に出てきましたが、この男と天女の間に生まれた男の子が1350年から1395年まで中山王として在位した察度という王様だと伝えられています。この察度は中国へ初めて使いをやって進貢を始めたり、東南アジアとの貿易を開拓したり、沖縄の海外交易の道を開いた王として有名です。その素晴らしい王様の母が天女だったというのは、とても神秘的で天の意志までも感じさせられる話です。
 このような天女のお話は、本土では七夕伝説として伝えられています。沖縄では、この物語のほか宮古では、天に戻った天女が群星(昴)になる「群星伝説」として、八重山では、貧乏な男のもとに押しかけ女房になった天女が、男の裏切りで子どもを連れたまま天に戻って北斗七星となる「七つ星伝説」として伝えられています。
 夜空を見上げれば、そこに天女の姿を見ることができるかもしれませんよ。