このお話は、八重山を代表する有名な悲恋物語です。最後でもふれているように、今でも石垣島の野底岳の頂上には、野底マーペーが石となって黒島の方向を見つめています。野底岳は海抜282.4メートル。別名野底富士とも呼ばれていますが、やはり「ヌスクマーペー」という名前が一般に知られています。山自体の姿が、マーペーが座って泣いているように見えるからでしょう。
  この物語の背景になっているのは、1730年代から行われた強制移住、別に道切り政策といわれている首里王府による八重山開拓のための政策でした。役人は、道路を境界線として、波照間島や黒島、小浜島、西表島の島人を無理やりに石垣島へ移住させたのです。どんなにお願いしても許されることのなかった、この悪名高い政策によって、何人の島人が犠牲になったことでしょう。  歴史は繰り返されるといいます。去る沖縄戦の時にも、日本軍の命令によって数多くの人たちがマラリア地帯に移動させられ、多くの命が犠牲になっています。
 この野底マーペーのような物語から、私たちは何を学べばよいのでしょうか。じっくり考えてみたいものです。